野球のスライディングは、特に走塁時に重要になるため、身につけておかなければならない必要不可欠な技術です。
野球でうまくスライディングができるように、正しいやり方とコツ、そして練習方法を詳しく解説していますので参考にしてみてください。
野球においてスライディングが重要な理由
野球においてスライディングは、走塁時にアウトにならずにセーフになるケースが増えることに加え、他にも重要な目的があるため、練習を行いやり方を身につけておかなければならない大事な技術です。
では、なぜ野球でスライディングをする必要があるのか、具体的に解説していきます。
野球におけるスライディングの必要性①オーバーランを防ぐ
野球では、一塁と本塁への進塁時はベースを踏んで駆け抜けることができますが、二塁と三塁への進塁時にベースから離れた場合、野手にタッチをされるとアウトになってしまいます。
ベースから離れてしまう、オーバーランをしないようにベース上で止まるには、ベースの手前で減速する必要があり走塁のスピードが落ちてしまうため、際どいプレーのケースではアウトになる確率が高くなります。
このため、走塁のスピードを落とさずにベース上で止まる仕方として、スライディングをするのがベストなのです。
野球におけるスライディングの必要性②タッチを避けやすくする
野手がタッチプレーを行う際、中腰または立った状態でボールをキャッチするケースがほとんどのため、ベースに向かってくるランナーは、立っている方がタッチをしやすくなります。
スライディングは低い体勢でベースに向かって滑るため、立った状態の時よりも野手にタッチをされるまでの時間を稼ぐことができ、セーフになる確率を高くすることが可能です。
また、立った状態では足でしかベースを踏むことができませんが、スライディングの場合は足だけではなく、手でベースを触ることもできるため、タッチを避けやすくするメリットがあります。
野球におけるスライディングの必要性③怪我を防ぐ
ベース上のタッチプレーの際、野手はキャッチするボールを見ており、ランナーは目に入っていないため、スライディングをせずにオーバーランをすると、野手と交錯して怪我をするリスクが高くなってしまいます。
また、全速力で走っている状態からスライディングをせずに急に減速した場合も、足の負担が大きくなり怪我の原因になってしまうため、怪我をするリスクが最小限になるように、野球で走塁時にスライディングをすることが重要なのです。
野球のスライディングの正しいやり方とコツ
野球でスライディングをすることは色々な意味で重要なんですね!
そうなんです。
しかし、スライディングは正しいやり方とフォームを練習で身につけておかないと、走塁時のスピードが落ちるだけではなく、逆に怪我をする原因にもなってしまうため、注意しなければなりません。
確かに走りながらするので難しそうですね…。
このため、ここでは野球で正しいフォームでスライディングをするやり方とコツを、スライディングの種類ごとに具体的に解説していきます。
スライディングのやり方①ストレートスライディング
ストレートスライディングは、片方の足を伸ばしてベースに到達するように滑る、野球で一番オーソドックスなスライディングのやり方になります。
スライディングキャッチと呼ばれる、守備時に滑りながらボールを捕る際にもストレートスライディングをするため、まずはこの基本となるストレートスライディングを練習で身につけるようにしましょう。
上半身を反らし身体を斜めにして体勢を低くする
走塁時のスピードを落とさないことが重要になるため、スライディングをする前に上半身を後ろに反らし、身体を斜めにして体勢を低くするのがコツで、スライディングのフォームの流れがスムーズになり、走塁時のスピードをキープしやすくなります。
身体が斜めになっていない体勢でスライディングをすると、身体が真下に落ちて滑ることになるため、スピードが落ちやすくなってしまいます。
また、膝や手の負担が大きくなり怪我をしてしまうリスクも高くなるため、野球で練習を行う際には注意が必要です。
片方の足の膝を曲げ伸ばした足の下に入れる
上半身を後ろに反らし、身体を斜めにして体勢を低くした後、片方の足の膝を曲げ、もう片方の伸ばしている足の下に入れます。
送球されたボールの確認や、野手のタッチを避けやすくするなど、状況に応じてどちらの足を伸ばすやり方でもストレートスライディングができると理想的ですが、難しい場合は手でベースを触りやすくなるため、右足を伸ばすフォームを野球の練習で身につけるようにしましょう。
また、右足を伸ばすフォームはスライディング時に身体が進塁する方向を向くため、ボールが逸れたケースなど進塁する際、起き上がった後にすぐに走り出すことができるメリットもあります。
上半身を捻り曲げた方の足の太ももとお尻で滑る
片方の足の膝を曲げ、もう片方の伸ばしている足の下に入れた後、身体を横向きにして足を伸ばし、曲げた方の足の太ももとお尻が地面に接するように滑ります。
上半身が正面を向いた体勢で滑ると、伸ばした方の足のお尻も地面に接しやすくなり、スライディングのスピードが落ちてしまうため、身体が横向きになるように上半身を内側に捻りながら足を伸ばすのがコツです。
また、身体を安定させるために手をつきますが、スライディングの体勢に入った直後は手をつかないようにするのもコツで、スピードが落ちにくくなります。
スライディング時に伸ばした足を上げない
スライディング時に身体が寝すぎると、伸ばした足が上がって地面と接している圧力が強くなり、スライディングのスピードが落ちることに加え、ベースにも足が届かなくなってしまうため、伸ばした足が地面から少し浮いた体勢が維持できるように滑るのがコツです。
また、スライディング時に伸ばした足が上がると、ベース上にいる野手に怪我をさせてしまう危険なプレーにもつながるため、十分に注意するようにしましょう。
スライディングのやり方②スタンドアップスライディング
スライディングをするまでの流れとフォームはストレートスライディングと同じですが、スライディングをしてベースに到達した後、そのままベース上で立ち上がるのがスタンドアップスライディングになります。
スライディングをする一連の流れで立ち上がることができるやり方のため、ボールが逸れたなどで先の塁へ進塁するようなケースでは、ストレートスライディングよりも素早く対応できるのが特徴です。
滑っている勢いを利用して足を使って立ち上がる
野球でスタンドアップスライディングの練習を行う際は、ベースに到達した瞬間にスライディングの滑っている勢いを利用して、曲げている足を使い身体を支えながら持ち上げるように起こすのがコツです。
バランスを崩してうまく身体を起こすことができない場合は、最後に手も使い身体を支えると立ち上がることができるようになります。
スライディングのやり方③ヘッドスライディング
走塁時に前傾姿勢になり両手を前に伸ばして、飛びつくように頭から滑ってベースに到達するのがヘッドスライディングになります。
ダイビングキャッチと呼ばれる、守備時にボールに飛びつくようにして捕る際にもヘッドスライディングをしますが、手や肩を痛めてしまうリスクがあるため、野球の練習で正しいやり方を身につけておく必要があります。
胸から滑ることを意識して顔を上げ指先を上に向ける
膝から倒れ込むようなフォームになってしまうと、スピードが落ちてベースに届かない確率が高くなるため、体勢を低くして胸から滑ることを意識してヘッドスライディングをするのがコツです。
また、顔を上げ指先は上に向けた状態で滑るのもコツで、顔の怪我やベースに到達した際に突き指などをしてしまうリスクを軽減することができます。
スライディングのやり方④手を使うフックスライディング
スライディングのやり方はストレートスライディングと同じですが、足ではなく手でベースを触るのが手を使うフックスライディングになります。
野手のタッチを避けながらスライディングをして手でベースを触る、というような動きが可能で、ストレートスライディングよりも身体の自由が利くのが特徴です。
なんでフックって言うんですか?
ベースに引っ掛けるようにしてスライディングするからです。
英語のhookからきてるんですね!
手がベースに届くギリギリの位置から滑る
ストレートスライディングのやり方で滑ることができれば、スライディングをする位置を注意するだけなため、手を使うフックスライディングは難しくありません。
野球で手を使うフックスライディングの練習を行う際は、身体がベースから遠くなるように、手がベースに届くギリギリの位置から滑るのがコツです。
スライディングのやり方⑤足を使うフックスライディング
足を使うフックスライディングは、体勢を低くするまでの流れとフォームはストレートスライディングと同じですが、曲げた足は伸ばしている足の下に入れるのではなく、膝を捻るようにして外側に向けて、曲げた足先がベースに到達するように滑るのが正しいやり方になります。
手を使うフックスライディングと同様に、ストレートスライディングよりも身体の自由が利くのが特徴ですが、曲げる足を外側に向けるため柔軟性が必要です。
上半身を傾け伸ばした足の太ももとお尻で滑る
どちらの足を伸ばすやり方でもフックスライディングができるのが理想的ですが、難しい場合は身体がベースの外側になり野手のタッチを避けやすいため、右足を伸ばすフォームを練習しましょう。
上半身は伸ばした足の方に傾けて、伸ばした足の太ももとお尻で滑るのがコツで、野球でフックスライディングをした際に、スピードが落ちるのを軽減させることができます。
状況に応じてスライディングのやり方を変える方法
野球のスライディングで基本となるのはストレートスライディングですが、必ずしもストレートスライディングをすることがベストという訳ではなく、それぞれのスライディングの特徴を活かし、状況に応じてスライディングのやり方を変えることが必要になってきます。
では、どのやり方のスライディングをすると理想的なのか、野球の様々なケースでスライディングを使い分ける方法を具体的に見ていくことにしましょう。
盗塁時(進塁時)と帰塁時のスライディングの方法
二塁、三塁への盗塁時や進塁時、または各塁への帰塁時の場合、際どいプレーになるケースではストレートスライディング、スタンドアップスライディング、ヘッドスライディングのいずれかの方法で滑りますが、次のプレーに素早く対応できるため、スタンドアップスライディングをするのが理想的です。
アウトになる確率が高いケースでは、タッチを避けやすくするために、フックスライディングをする方法が理想的ですが、ベースから手や足が離れないように注意する必要があります。
本塁への突入時のスライディングの方法
本塁への突入時の場合は、ベースに触ればベースから手や足が離れても問題ないため、タッチを避けることを最優先にすることができます。
以前はホームベース付近にいるキャッチャーから離れて滑ることができる、フックスライディングをする方法が理想的でしたが、現在はコリジョンルールが導入されたため、ヘッドスライディングをすることも可能で、その際はキャッチャーから離れるために手を広げて滑るのがコツです。
コリジョンルールって何ですか?
野球でキャッチャーが本塁に向かってくる走者をブロックしてはいけないルールです。
キャッチャーがホームベースを塞ぐことで、走者とキャッチャーが激突して怪我をしてしまうリスクを軽減させる目的で導入されたんです。
なるほど!
怪我をしにくくなったからヘッドスライディングも選択肢のひとつになったんですね。
牽制時のスライディングの方法
野球で出塁した際に牽制球で帰塁する場合は、リードをとっている前傾姿勢からそのままスムーズにベースに戻ることができるため、ヘッドスライディングをする方法が理想的で、足から戻るには前傾姿勢から足でスライディングをする体勢を作る必要があり、帰塁まで時間がかかってしまいます。
ヘッドスライディングでの帰塁時に、牽制球のボールが逸れたケースに備えるため、片手だけを伸ばしてもう片方の手は地面についた体勢で滑るのがコツで、すぐに立ち上がって対応することができるようになります。
打った後の一塁へのヘッドスライディングの是非
高校野球などでよく見る光景ですね!
そうなんですが、走塁のスピードを落とさずに滑る技術がないと、そのまま駆け抜けた方が速いんです。
技術がないと意味がなかったんですね…。
チームを鼓舞する、審判にセーフをアピールする方法として一塁へヘッドスライディングをするケースなどもあるため、まったく意味がない訳ではないんです。
ですが、ヘッドスライディングはスライディングの中で一番怪我をしやすいため、無理をして使わないように気をつけないといけません。
実践するには野球の練習でうまく滑るコツをつかんでおくことが大事なんですね!
野球でスライディングを練習する方法
野球で正しいフォームでスライディングをするには、練習でスライディングを繰り返し行い、感覚やコツをつかみ身体に覚えさせることが必要になります。
走りながら滑るって、ちょっと怖いですね…。
そうなんです。
いきなりスライディングの練習をしようとすると、最初はどうしても恐怖心が勝ってしまいます。
恐怖心から中途半端なスライディングをすると怪我の原因にもなってしまうため、少しずつ段階を踏んで練習を行うことが重要なんです。
それで恐怖心をなくすんですね!
では、野球でスライディングの練習を行う際、どのような方法で段階を踏んで練習すると効果的なのか、具体的に見ていくことにしましょう。
スライディングの練習方法①フォームを作る
どのような体勢でスライディングをするのか確認するために、まずは座った状態でスライディングのフォームを作り、どちらの足を伸ばした方が違和感がないかチェックします。
どちらの足を伸ばすやり方でもスライディングができると理想的ですが、違和感があるとスムーズにスライディングの体勢に移行できないため、最初は違和感のない方の足を伸ばすフォームにして、どちらの足を伸ばしても違和感のない場合は、メリットの多い右足を伸ばすフォームを作るようにします。
スライディングの練習方法②遅いスピードで滑り流れを覚える
スライディングのフォームを作り滑る体勢の確認ができたら、実際にスライディングの練習を行いますが、最初は短い距離を遅いスピードで走って滑り、スライディングの一連の流れを覚えるようにします。
その後に少しずつ走るスピードを上げて、最終的に全速力で走った状態でも滑ることができるように、スライディングの練習を繰り返していきます。
この練習を行う際、滑りやすく衝撃の少ない芝生の上や、怪我のリスクを軽減できる砂場で滑るのがコツです。
芝生の上や砂場で練習を行うと、スライディングに対する恐怖心を抱きにくくなるため、スライディングをすることに早く慣れるようになります。
スライディングの練習方法③理想的な位置から滑るコツをつかむ
芝生の上や砂場でスライディングの流れを覚えることができたら、野球のグラウンドを使用し実践に近い形でスライディングをして、ベースに到達できる理想的な位置から滑るコツをつかむ練習を行います。
ベースから2メートルくらい手前でスライディングの体勢に移行するのが一般的なため、最初はその位置に目印として白線などを引いて滑り、スライディングをする位置を調節しながら練習を繰り返し行い、ベースに到達できるベストなタイミングで滑るコツをつかむようにします。
怪我防止のためにも正しいスライディング技術は不可欠
スライディングは走塁のスピードを落とさずに滑ることだけではなく、怪我をしないように滑る技術も必要で、無理なスライディングは大きな怪我につながるリスクがあるのも事実です。
しかし、野球でスライディングができないとプレーに支障をきたす原因になってしまうため、ここまで解説してきたやり方やコツ、練習方法を参考に、怪我をしない正しいスライディング技術を身につけるようにしましょう。